皆様、ブルーウッズ・ストラテジック・アソシエイツ
代表の塩谷です。
日々、経営層の皆様とのお話の中で感じたことを書いております。
さて、前回は
「DX経営戦略において、組織はそのままで良い? デジタル人材募集って言うけれど。。。明確にミッションを定義してますか?」
でした。
今回は、
「DX経営戦略を進めることで、あたなの現在の事業定義や価値が大きく変わる? それともDX戦略っぽい取り組み程度で済ましますか?」
です。
最初に申し上げておきますが、今回、長めです。。。が、是非、お付き合いくださいませ!
それでは、今回もはじめていきましょう!
先日、地方(東北ではございませんが。。。)の某小売企業経営層の方々と定例ミーティングを実施しました。今回で5回目となるDX戦略立案に関する議論をコーチ型コンサルティングでご支援致しております。
最終的に議論は「事業定義の変革」「提供価値の変化」となりました。議論と言うよりも、その経営者の方々の考えをお聞きしながら質問を投げかけて考えを整理していった2時間を過ごしました。
さて、その某社ですが実店舗を3県に跨いで展開し、自社ブランド商品、メーカー商品、生鮮食料品を提供しています。数十年も前から地域密着型で事業を営んでおり、一時期は店舗をどんどん増やしていき、地元では優良なお店でした。しかし、この展開地域である3県の高齢化が進み、少子化の加速で小学校の統廃合も行われ、人口が増える見込みもなく、町の商店街はシャッター通り化し、高齢者が買い物難民となっています。自分で車を運転して買い物に行くこと自体がしんどい方々が多くなってきている地域です。
その某小売企業様の経営層の方とミーティングするにあたり、ドライブ兼ねて3県の内の某県の複数店舗に実際に足を運んでみました。この幾つかの店舗は随分前に担当させて頂いた店舗です。当時の記憶と比較しても街は相当に寂れてしまった活気のない状況でした(私の出身地の八戸市と同じだなぁと感じ寂しくなります)。その当時ご訪問させて頂いていた店舗でお昼の弁当を買いながら店内を回っても、土曜日ではありましたが人もまばらです。店員さんに軽くお話を聞いても、来店客数は平日よりも多少多い程度とのことでした。平日は更に静かということですね。
次に、車を駐車場に置いたままた、店舗近隣を歩いてみたのですが、以前にあった町のお肉屋さん、八百屋さん、ラーメン屋さん、おもちゃ屋さん、和菓子屋さんなどは全てシャッターが閉まり店名も降ろされていました。店舗のまわりも更地にしてから大分時間が経っているのか雑草が生い茂り、またコインパーキングになっている場所もある状況でした。更に、路地を入って行くとひっそりとしていて、1時間散策してすれ違った住民は10人いないです。
12時過ぎにお弁当をその店舗で買ってから1時間の散策後、駐車場に戻ると13時過ぎ。駐車場に止まっている車の数は18台(自分含めず)となっていました。ということは、最低店内に18人いると思ったので、もう一度店内に入ると買い物客は8人しかいません。。。他の10人の方々はどこに行ったのでしょうか? ちなみに、店員らしき人を数えると5人。残りの5人の方はバックヤードにいらっしゃるのでしょう。あくまでも推察ですが、店員の方々の通勤車両も駐車場に停めているのかもしれません。
(怪しまれないように。。。)カゴを持ちながらどんなものをお客様は買い回られているのかカゴの中をチラチラ覗いていたのですが、8人の内6人のお客様のカゴにはお弁当が入っていました(私は一体何をやっているのか。。。と思いながら。。。)残りの4人の方は、野菜売り場から魚売り場へと移動した感じのものがカゴに入っていました。
その後、社内で弁当を食べてから、車で半径5キロ、10キロ、15キロと車を走らせてみました。すると気づいたことがあります。セブン・イレブン、ローソン、ファミリマートの駐車スペースには車が結構停まっています。明らかに社内で飲食したり、スマホ画面覗いたり、通話している人などしています。そして、なんと、シルバーカー(荷物を入れてフタを閉めると椅子にもなる手押し車)を押す、数名のおばあちゃんがコンビニに入って行かれます。私はセブンに入っておばあちゃんが何を買うのか見ていたのですが、袋入りのカット野菜(キャベツの千切りだったかもしれません)、生卵のパック、調味料、食パン、おにぎり(昼用か?)、それと地元の農家?が露店的に置いている野菜を買っていました。店員さんが声をかけて話していたので顔見知りの様子でした。あと、お孫さんを連れて、お菓子とコロッケを買っているおじいさんもいました。その後、更に5キロ程先のコンビニに入るとお年寄りだけでなく、お子さんを連れたお母さんが焼きそば(生めん)とソーセージ(袋入り)、牛乳など買い物をしていました。まぁ、あくまでも、私の個人調べでしかないのですが、訪問した某小売店(スーパー)から5キロ離れたコンビニや10キロ離れたコンビニでも、生活必需品や生鮮食料品を購入しているおばあさんや子育て世代のお母さんがいるのです。わざわざ、5キロ先、10キロ先のスーパーまでは行かないで済ます。言い方を変えれば、10キロ先のスーパーまで行かなくてもコンビニで済ませられる買い物需要もあるということです。(まぁ、お刺身とか、お肉の種類は無いですけどね)要は、スーパーvsスーパーによる同業他社との競合関係ではなく、いくら取り揃え商品点数がコンビニより圧倒的に多いです!と言っても、スーパーvsコンビニの競争関係は地方でも起きているということです。各コンビニ企業ではポイントサービスはしてますし、ネット通販の受け取りサービス、宅配、公共料金支払いなど、買い物以外の需要も取り込んでいます。
※ここまでお読み頂きありがとうございます! 私が見たこの状況はすべてを表してはいませんが、もしあなたが経営者としたら、事業部長だとしたらDX戦略立案に関係ない話しだと思われますか? それとも、何か気づきを得られそうな気がしますか?
さて、経営層の方々とのミーティングの最初の方は、店員の数を極力減らして無人店舗化することや店内にAIカメラ設置して顧客の動きを分析して店内レイアウトに工夫を凝らすなど、技術視点からのお話が多かったのですが、私がある店舗を訪れて、いろいろと目で見える情報収集とそこから得た推察等をお伝えさせて頂くと、社長は「今までの事業定義、事業モデル、事業価値のままで良いのか?」という議論になりました。
更に社長はこうも仰いました。
社長「DX戦略だと考えて無人店舗だとか、AI活用を検討するなんて言ってねぇ。システム会社に色々話を聞いたり、東京のテクノロジーイベントに若手を行かせたりして考えさせているんだが、どんな技術を活用するかとか、海外の小売の事例などを見て、やはり自動化だよなとか、そういう方向の話になるんだよ。 私は、何か足りない臭いがしているんだよ。」
専務「たしかに、〇〇さん(社長)、そうなんだよねぇ。ほんと何かを考え忘れている気がしますよねぇ。」
暫く、考えられてから社長が「今までの事業定義を変えるといってもなぁ」と仰り少し沈黙されましたので、考える上でのキッカケ質問として幾つか投げかけてみました。
・「商品を販売すること以外で、地域住民の方々との関係構築をどの様な価値提供で行うのかを考えてみてはどうですか?」
・「顧客と言う言葉をよく言われますが、顧客という言葉ではなく、商品店舗で買ってくれる人、買ってくれていない人を含めて地域住民と捉えて、関係構築の仕方を商品販売以外で考えてみてはどうですか?」「例えば、店舗を全く持たないでスーパー事業を行い、地域住民との関係構築をどの様にすすめるか?という風に制約をかけて考えてみる」
・「自分達は、地域住民についてどれだけのことを知っていて、どの様なデータを個々の住民について蓄積しているのか?」
・「地域住民が来店する前、来店時、来店後、どの様なことを考えて、どの様な行動をしているのかご存じですか?」
・「貴社が地域の生活プラットフォーム提供者として存在価値を提供する時に、スーパー機能以外に地域住民の生活に対する価値をどの様に提供出来ますかね?」
最後に、「DX戦略立案においては技術変化だけ追っていてもダメで、顧客変化も追う必要があり、それらが変わるということは従来の事業定義、事業価値、顧客関係も変えないと十分ではないんです」と忖度せずに提言してました。専務からは「いたって当たり前のことだよなぁ。でも、何故か見ているポイントが近かったり、視野が狭いモノの見方しか出来ていなかったなぁ」
社長からは「専務、DX戦略というけれど、結局、顧客戦略とか、提供する価値とか、我々も〇〇地方で人口減だから難しいとか言ってないで、地域住民という捉え方で地域の協力企業などを巻き込んでもいいかもしれないね。その方が、DX戦略の方向性検討が色々と出来るな」
更に、社長は「うちの30代や40代の社員、50代にも言えるかもしれないが彼らの5年後、10年後にもこの地域で事業が出来る様に考えないといけないと改めて認識したよ。DX経営戦略を考える時には、今後どの様に価値提供していくのかについて、しっかり議論する方が先かもしれないな」と仰っていました。
この小売り企業様の場合、DXの取り組みについてAIやIoT、無人店舗など近視眼的に目に見える形のモノからアプローチされていました。私はそのアプローチからでもDX戦略の方向性を見出すことは出来るとは考えます。でも、技術先行型は視野狭窄的思考のリスクを高めるとも考えます。この企業のDX戦略の取り組みはこれからなのですが、地域の協力企業を巻き込むことで地域密着型コミュニティーを形成していくことが各店舗で可能だと考えます。将来的に、都市圏からこの地域にUターンしたり、移住する人を増やし、起業する人たちやリモートワークが浸透して場所を選ばない働き方が出来る人たちの転入を促すことも出来ると考えます。そうなると、この小売り企業は、必ずしもこの先継続して物理的に店舗を持つ必要があるのか?逆に店舗を配送・受取センター化して移動販売特化店舗にしてもいいのではないか?など、アイデアが出てくるはずです。そこで「いやいや、それは無理」と思うか「やってみる価値はあるな」とチャレンジするかは、あなた次第です!!
現在、皆さんの取り組まれているDX戦略は、DXっぽいという程度で止まっていることはありませんか?
デジタルの時代は、小さく開始して検証・市場投入・市場からのフィードバックの獲得・再検証を早く回していく(アジャイル経営)が大事たと以前のブログでも書きました。(過去のブログ)これを意識して、従来提供してきた事業価値を急ピッチで変革し続けることに、是非、一緒に取り組んで参りましょう!
さて次回は、
「なぜ、日本企業はコロナ禍でリモートワークに本気で取り組めないのか? IT環境提供だけでダメ! 大事なこと忘れてるかも?」
について書いてみたいと思います! 何を今更?と思われるかもしれませんが、いやいや、リモートワークを積極的に進められていない中小企業(実は大手企業も)の皆様が見落としているポイントがあります!
今回も、ここまでお読み頂きましてありがとうございました!