皆様、ブルーウッズ・ストラテジック・アソシエイツ
代表の塩谷です。
前回は、
「DX経営戦略では、データの経営資産化が大事だけれど。。。そもそも社内にあるデータは宝の山ですか?」エピソード1
でした。
今回は、
「DX経営戦略では、データの経営資産化が大事だけれど。。。そもそも社内にあるデータは宝の山ですか?」エピソード2
を書いてみたいと思います。前回のエピソード1をお読みになられていない方は、是非、そちらをお読み頂くと本エピソードに至った背景がお分かり頂けます。
では、はじめていきましょう!
前回のエピソード1でお話しした通り、某社で取り組まれているDX経営への取り組み要素の一つである「データ活用」について、社長と専務よりお話をお伺いしたのですが、私はどうしてもその取り組みが「単なるデータ統合」の話であり、「データを資産化し活用する」ことを目的としていないことに違和感を感じ、「そもそも現場が求める必要なデータが格納されているのですか?」
と忖度なく聞いてしまいました。そして、今回の、各事業部の部長以下(現場よりの方)に対して社長、専務も入り、現場と意見交換するミーテイングを持つことになりました。
実は、前回のブログ同様に会話形式で記載しようと思ったのですが、思いのほかDX経営テーマ以外に根深い事業課題、組織課題が出てきたので、あくまでも「データ」に関する部分だけを抜き出して、多少シンプル化して書いております。
<各事業部の部長以下の集まる「データ」に関する会議にて >
※全員、リモートでの参加となりました。
最初に専務から、今回のミーティングの目的などをご説明頂きました。特に現在の統合データ基盤プロジェクトは、投資を上回る回収を意識して各事業部の皆さんに大いにデータを活用して事業収益を伸ばして欲しいと話されました。その為に、必要なデータとしてどの様なデータがあれば事業部側の役に立つのかなど意見が欲しいと説明がありました。会議時間は90分です。早速、意見を出して欲しいと専務は投げかけたのですが、当然というか。。。口火を切る人が出ず沈黙が5秒程度ありました。
「こうなるよなぁ」と私は思ったので、私の方から質問を投げてみることにしました。
本来なら、順序的には最初に参加者に対して、自社で推進されようとしているDX経営について参加者の理解を確認しようかと思ったのですが、DXは実態のない言葉でしかないので、それは後回しにして以下の質問を投げてみました。本ミーティングには8事業部の部長、課長やリーダーの方が参加され総勢12人参加されていました。
私「各事業部の方々にお聞きします。それでは、〇〇事業のA部長。ご自身の事業ってどの様な課題を解決するための事業なのですか?」
A部長は自分達の事業についてご説明されました。その他の事業部の部長や課長、リーダーの方々にも質問に答えて頂きました。
※ちょっと発言内容には企業特定されやすい内容もあるので記載出来ないのですが、ここでは、私の質問の仕方を意識して貰いたくお願い致します!
私「〇〇事業のB課長にお聞きしますが、その事業のターゲット課題を解決できる競合他社にはどの様な企業がいますか?同業他社ですか?海外から参入される脅威とかありますか?」
B課長「最近では競合参入が増えてきて、シェアが減ってきています。特に異業種の参入が増えた印象です。」
私「客観的にみてB課長の事業は競合他社と比べて圧倒的に差別化されていますか?」
B課長「うちが提供する商品と付帯サービスだけ捉えれば差別化は出来ていると思うのですが、最終顧客から見たトータル価値で判断されると、特徴が無くなりますね」
専務「B課長、そうなの? それって、いつからそう感じてたの?」
B課長「そうですね、昨年の5月から販売代理店とのお話やネットの評価など読んでいると、うちの商品より他社の商品についてのコメントが増えて来ているなと感じます」
私「各事業部でアンケートとか実施されていると聞きましたが、そういう情報を参考にすれば早く兆候にきづけたということはありませんか?」
B課長「そうなんですが、販売代理店がレポートにまとめて報告してくれるものの、詳細が分かりにくいんです。ただアンケート用紙は紙でまとめて送られては来ています。」
私「アンケート用紙はデータ化されているのですか?」
B課長「紙のままです。保管はしているんですが。。。データ化の時間が無くそのままになっています。」
私「それってよくあることなんですよ。しかも販売代理店がレポートにまとめているということは、まとめている方のフィルターがかかっている場合が多いので、お客様の生の声が伝わってこないんですよね。」
C部長「B課長、そのアンケートって定期的に実施しているの?」
B課長「四半期に一回から二回ですね」※うーん、それじゃ役に立たないかもなぁ。。。
私「TwitterやFacebookが世の中に出始めてから、今までの企業と顧客のコミュニケーションの形が変わったと考えます。自社の商品、サービスの評価や意見について顧客は企業に対して直接述べるよりも、世の中に直接自分の意見をSNSなどを通じて発信するのが当たり前になり、顧客は企業の発言よりも、他の顧客体験を参考にされるようになってきています。皆さんも、プライベートではSNS使って体験を発信したり、何か商品・サービスを購入する時に、一つ一つメーカーのサイトを確認したりはあまりしないのではないでしょうか? D部長どうですか?」
D部長「そうですね、アマゾンを良く活用しますが、何か買う時はアマゾンのレビューを参考にしていますね。あとは、検索して誰かのコメントを読んで参考にしています。」
私「ですよね。Twitter, Facebook, インスタグラム、アマゾンなどなど、個々に情報発信する世の中になって最低でも10年以上が経ち、10年前に50歳だった人は60歳になりスマホを普通に使い、ネットで買い物や決済、自ら情報発信するなど、少なくてもそれらのことが出来る様になっていますよね。LINEで孫とやり取りしている人もいますしね。今の20代、30代、40代はデジタルが当たり前の人達とも言えますよね。もはや、明らかにデジタルが彼らの社会性を変えています。この中に、20代の方いますか?」
D部長「E君とF君は新卒入社三年目だよなぁ。」
私「Eさん、Fさん、日頃SNSはどの程度使っていますか?」
E君「私は、毎日必ずSNSは使っています。実は、自宅に電話が無くて携帯電話だけなんです。しかも通話はLINEですが、ほとんどチャットです」
F君「私も、Eさんと同じですね。あとは、情報はユーチューブの動画コンテンツから得ていることもありますね。【〇〇を買って使ってみた】のようなのを参考しています。」
社長「あー、たしかに、うちも息子や孫とはLINEやFacebookで近況知ったりしてるよ。今はコロナで会えないからネットで誕生日プレゼントを孫に送ったりしているが、確かにレビューを参考にする。うちの妻はコメントをよく書いているよw。」
専務「私は、この前釣り具の評価を書いたなぁw」
この後、参加者同士て暫く、会話が盛り上がりました。議論をそろそろ収束させるために、以下の質問を私は投げました。
私「いろいろと、プライベートではSNSを活用して情報を調べたり発信したりして、意思決定していますよね? それって投資対効果を事前に出来る限り知っておきたいということではないでしょうか?」
社長「確かに、言われてみればそうだ」
私「では、この会議の目的に戻りますが、現在、DX経営戦略の一貫として貴社では【データ統合プロジェクト】が進んでいますが、各事業部の皆さんにとって、自分達が事業活動する上で必要な情報って社内にどれだけあると思いますか?または、データ化されるべき情報ってどれだけありますか?数値情報以外のデータである非構造化データがどれだけ社内にありますか?」
B課長「多分、他の事業部で必要かどうかは分からないですが、少なくとも社内に必要な情報はないです。社外の方に多くの情報があるので、それを活用したいですね。実際活用していますよ。」
他の事業部から参加されている方々からも、それぞれに必要な情報について発言が上がってきました。リモート画面越しでしか分かりませんでしたが、専務は何やら手帳にメモっているご様子でした。
ミーテイングの残りの時間も少なくなってきたので、次に向けた質問を投げてみました。
私「各事業部の皆さんから、自分達の事業活動において必要な情報が何か挙げて頂きましたが、本当にその情報が事業活動上必要ですか?どのようなことを知るために必要で、どの様に活用されたいですか?」
専務「そこが肝心だよなぁ。現時点では統合データ基盤は、社内の過去から蓄積されてきたデータが多い状況だし、皆が必要と言うような情報は無いに等しいかもしれない。社外データを増やす必要がある気がする。それに社内データの多くは業務結果の数値データが多いからなぁ。それらは多少の示唆は得られるかもしれないが、特定の目的にしか使えないかもしれない。ツイッターとかさ、画像だとかさ、そういうデータが顧客の意見を知る手掛かりとしては重要になってきている気がするな」
私「そうですね。ただ日本でツイートされるコメントとかは絵文字が多すぎて分析対象になりにくいと言われています。それから、日本語“ヤバイ!”という言葉がいい意味でも、悪い意味でも使われていて文脈で感情分析がしにくいとも言われています。なので、人による吟味は必要ですが、活用するべき情報源ですね」
いろいろと議論し、時間が迫ってきたので社長から締めてもらいます。
社長「90分じゃ時間が足りなかったな。ただ、今回のミーティングで我が社のDX経営戦略推進において「データ」というのはデータ活用シナリオをしっかりと考えて取り組まないと経営資産にはならないという認識を改めて持てたのは気づきだった。データをただ統合した環境を用意すればいいってことじゃないな」
専務「そうですね、各事業部毎にデータ活用シナリオを定義することが優先順位としては高いですね。本日は急遽集まってもらって議論しましたけど、改めて各事業部毎に競争力ある事業企画を考えるために必要なデータが何かを考えませんか? 特に社外にあるデータの入手方法を検討しないといけない。そもそも事業企画に必要な情報活用シナリオを検討しても、そもそも入手手段がないことには話にならないからなぁ。」
私「〇〇さん(専務)それでは、各事業部毎にミーティングを設定して頂き、各部長より検討メンバー選出して貰うようにお願いします。」
ということで、今回書きました内容以外にも、実はこの企業様にとっては根深い「DX経営戦略推進の組織、デジタル人材、事業変革、報酬制度、事業定義等」について課題が浮き彫りになりました。
今後ですが、この「データ」ついて議論をする前にやることがあります、それは各事業部で自分達の事業の競争優位を客観的に評価することです。
ミーティング後に、私が社長と専務に申し上げたこととして、以下の検討ポイントをお伝えしました。
「既存事業にデジタルを活用することで、新たな価値を加えることが出来るのか?」※競争優位なら無理に急いでデジタル活用する必要はありません。
「その新たな価値は、しっかりと差別化されるのか?」※商品・サービスだけでなく、ビジネスモデルなども含む。
「競合他社に模倣される可能性が高い価値なのか?」※その差別化を支える社内外の資源の構成。例えば、デジタル人材やデータ資産、資金力(金融機関や投資家などからの外部資本含め)、国内外のパートナーシップなどは模倣されにくいのか?
そして、DX経営戦略において変革エンジンとなる組織・人財・カルチャーが弱いと成功しませんよと、忖度なくお伝えしました。これは多くの企業でDX経営を検討する際に手薄になるポイントだと私は過去のご支援経験から感じます。
そこで次回は、
「DX経営戦略において、組織はそのままで良い? デジタル人材募集って言うけれど。。。明確にミッションを定義してますか?」
です。
今回も、最後までお読み頂きまして有難うございました!